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2007年5月の8件の記事

2007年5月31日 (木)

上原浩先生と私

上原浩先生と私

いつも最後に純米酒云々と書いているので、上原先生を信奉する一派と見られますが、少しスタンスが違います。

上原先生とは3度お会いすることができました。少しだけお話をさせていただくことができ、大変うれしく思いました。

お会いしたときの上原語録

「酒造界の毒舌三羽烏とは、下岸伊作氏(三重県醸造試験所技官を勤めた)と道中久氏(鑑定官室長歴任、日本盛にもいたらしい)とこのわしのことじゃ。」

「(最初の上司だった)小穴富司雄鑑定部長もそうだったが、佐藤信氏(元醸造試験所所長)もこの業界にいるには頭が良すぎた人だった。」

(「今の雄町は昔の雄町ではないといいますが、利守酒造の純米大吟醸は良いと思ったのですが」との私の問いに答えて)

「利守の雄町は別じゃ。あの雄町は良い。」

「あんたよう勉強しとるのー。」

他色々とお話をさせていただき、大変勉強になりました。

正直な話、先生が実名を挙げて推薦している蔵元さんのお酒は、私には?となることが時々あります。私が未熟なだけかもしれませんが。

私が上原先生との出会いから得たことというのは、歴史をひもとくことの重要性を学んだことなのです

「1に蒸し、2に蒸し、3に蒸し,4、5がなくて6に麹」この言葉の裏側には、酒造に携わってきた多くの先達の知恵が凝縮されています。

先生がお亡くなりになられてはや1年が過ぎました。

あらためてご冥福をお祈りいたします。

最後に一言、

「とはいえ、日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

今日の参考文献

 日本酒と私 上原浩著 蔵元交流会(平成11年)

 清酒工業 山田正一監修 光琳全書(昭和41年)

2007年5月30日 (水)

吟醸酒批判(ヤコマンの登場)

吟醸酒批判(ヤコマンの登場)

昨日は戦前に行われた日本醸造協会主催の全国清酒品評会の話をしましたが、戦後にも日本酒造協会(日本酒造組合中央会の前身)が主催となって昭和27年に全国清酒品評会が開催されました。この品評会は、市販酒を審査の対象とし、精米歩合70%以下の酒に出品を限定しました。そうしたところ名を上げたい地方の蔵元は吟醸酒を出品、灘大手の酒は苦戦したそうです。吟醸酒に対し、酒の本場灘の蔵元は反発し、灘大手の意向を無視できない主催者は、品評会を昭和33年の第4回で終了せざるをえませんでした。その蔵元たちの情熱の向かった先が、全国新酒鑑評会なのです。

第3回品評会の審査員で当時の菊正宗の技師長だった木暮保五郎氏は吟醸酒のことを「あんな腐れ酒」ともらしていたそうです。

現在の高香気性酵母が開発されるまでは、香りを出すことが難しく、香りが出ることが良い酒の条件だったようです。しかし、香りをつける技術が開発され、物議をかもした時期があったようです。

昭和41年に開発された「ヤコマン」という奇妙な名前のこの代物、開発者の頭文字をとって命名されました。「ヤ」は山田正一博士(元醸造試験所所長)、「コ」は菰田快氏、「マ」は東京農大の学生だった真野史義氏から取ったものです。

このヤコマンドレンは酒に入れるとたちまち芳香が高い酒へと変身してしまう非常に便利なものだったようです。この香りに審査員も惑わされ、とうとう昭和47年の春の鑑評会以降ヤコマンは禁止されました。

ヤコマンした酒はすぐわかるなどという人がいますが、プロの審査員が見分けられなかったのをどう見分けることができるのでしょう。わかる方ぜひお教えください。

その後、ガスクロマトグラフィーを用いて酒の香気成分を分析し、E/A比という基準を用いて、基準値を超える酒はヤコマン認定をうけたそうです。本当に良い酒ができて、金賞間違いなしと思ったところが、基準値を超えてしまい、金賞を逃してしまったようなことがあったと聞きます。

余談ですが、このヤコマンドレン採取機らしきものがあの「夏子の酒」に描いてありました。持っている方は探してみてください。もってない人は是非買って読んでください。

吟醸酒に関する歴史は「吟醸酒への招待」(篠田次郎著 中公新書)によくまとめられていると思いますので、興味のある方はこちらをご覧になってください。篠田氏の吟醸酒に対する想い、情熱は、素晴らしいの一言です

最後に一言、

「とはいえ、日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

今日の参考文献

吟醸酒への招待 篠田次郎著 中公新書(1997年)

さけ風土記 山田正一著 毎日新聞社(昭和50年)

酒つくりの匠たち 老杜氏の語る日本の酒 菅間誠之助著 柴田書店(1987年)

2007年5月29日 (火)

吟醸酒批判(活性炭の登場)

吟醸酒批判(活性炭の登場)

全国新酒鑑評会は、明治44年春に第1回の鑑評会が開かれて以来、戦災により中止となった昭和20年、醸造試験所移転により休止となった平成7年の2回を除き、毎年春に開催されてきました。

これに対し、戦前には全国新酒鑑評会に先行して開催された清酒品評会(明治40年に始まり1年おきに開催、昭和13年第16回で中止、戦後再開されたが昭和26年に終了)が秋に行われ、出品数から見るとこちらのほうが大掛かりなものであったようです。

ちなみに出品数がピークとなった昭和11年第14回清酒品評会の出品数は5169点、同年全国新酒鑑評会出品数は304点(この時の全国1位は両方とも福島の『会州一』です。今年金賞を取っている蔵元さんですね。)と勝負にならない大差となっています。

この品評会が技術向上に貢献したであろうことは、明治43年に発刊された「醸造協会主催 第二回清酒品評会 受賞清酒解説集 全」なる本に見出すことができます。この本には受賞酒の仕込配合やら成分値が公開してあります。

しかし、情報の共有は没個性を招き、同じ方向に走りやすい弊害をもつものです。まず出てきたのはお酒の色を巡る問題でした。

「品評会出品酒は極度に淡色のものを良いとして活性炭素の濫用が行われたのは昭和9~10年頃であって此のため醸造試験所で品評会改善全国技術者大会という未だかつてない大会議が大真面目で行われる夢の様な事件が出来した。」(酒造(清酒篇) 山田正一著 発酵協会)

ここに「活性炭」という秘密兵器が登場します。「淡麗辛口」の陰の主役です。なんとこの「活性炭」は第一次世界大戦の毒ガスの防毒剤の主体として研究が進んだものなのだそうです。当初は主に腐造酒矯正の手段として用いられていたものが、品評会出品酒にまで応用されました。現在では「無ろ過」と書いている以外は、ほとんどの酒に使用されているのではないでしょうか

その他、鹿又親氏らによる吟醸経済化論、品評会の審査方法への批判も昭和初頭にすでにおこった論争だったようです。

最後に一言、

「とはいえ、日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

今日の参考文献

清酒と活性炭 田中終太郎著 帝国酒醤油新報社(昭和10年)

 日本の酒 坂口謹一郎著 岩波新書(昭和54年)

 吟醸酒のはなし 秋山裕一+熊谷知栄子 共著 技報堂出版 (平成3年)

 酒造(清酒篇) 山田正一著 発酵協会(昭和24年)

2007年5月28日 (月)

吟醸酒の変遷

吟醸酒の変遷

昨日は全国新酒鑑評会の話をしましたが、吟醸酒はいったいいつからあったのでしょう

明治27年刊「酒造のともしび」(岸五郎著)に「吟醸」の言葉が初めて登場します。当時の意味は「吟味して造った」という意味で、現在の吟醸酒とは異なっていたそうです。

その辺の事情を「醸酒記」(元大蔵省醸造試験所技官 大内残紅著)に見出すことができます。

「吟醸という名称は誰が付けてくれたのか、健忘症の自分ははっきりとしない。然し、技術者達の会合に於いて『精白何割減以上の原料を以って醸造したるものを爾今吟醸酒と命名す』などという決議のなかった事は確かである。兎も角も明治の末期から大正にかけて広島県の三浦仙三郎翁が、清酒醸造の改善を企てて、全国に広島県産酒の権威を示してから、所謂吟醸という言葉が芽さした事は明らかであった。」(昭和8年1月寄稿 吟醸酒に聴く より抜粋)

また、戦前酒造界で活躍した、戦前の吟醸酒を最高の酒質だとした杉山晋朔氏はこう述べます。

「吟醸酒とは果実様の馥郁たる芳香を有し爽快にして濃醇であり五味が調和し云うに云われない『うまい』風味を持っている酒である」(酒造の栞10 吟醸 杉山晋朔著)

酒質向上への努力の結実が「吟醸酒」なのであり、精米歩合がたとえ35%であったとしても調和の取れない品位がないものは大吟醸とは言えないと思います。

私には今現在のカプロン酸全盛の酒質が唯一無二、最高の酒質ではないように思えます。

 吟醸酒のたどってきた道を調べるには、以下の本がおすすめです。

今日の参考文献

吟醸酒誕生―頂点に挑んだ男たち― 篠田次郎著 実業之日本社

吟醸酒を創った男 「百試千改」の記録 池田明子著 時事通信社

吟醸酒のはなし 秋山裕一+熊谷知栄子 共著 技報堂出版

醸酒記 元大蔵省醸造試験所技官 大内残紅著

酒造の栞10 吟醸 杉山晋朔著

 最後に一言、

「それでも日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

2007年5月27日 (日)

全国新酒鑑評会

先週全国新酒鑑評会の結果が発表されました。全国の蔵元が真剣になって取り組み、その結果に一喜一憂します。ただ、この酒は消費者にとって飲んでおいしいと言えるものではないようです。

人を教えるうえでの心得としては、菊好きの人が菊を作るようにしてはならないもので、百姓の菜・大根を作るように心得なければならないものでございます。

菊好きの人が菊を作るというのは、『花、形が見事に揃うよう、立派な菊の花ばかりを咲かせよう』として、多くの枝をもぎり取り、数多くの『つぼみ』を摘み取り、延びすぎたところは、切り揃え、その人好みのとおりに仕立て、咲かない花は、歌壇の中に一本もないようにするもの。

百姓の菜・大根作りというものは、一本一本も大事にして、畑の中には、上手に育ったもの、そうでないもの、へぼなものもあったりして、大きさも大小、さまざまに不揃いなものですが、それぞれを大事に育て、良く出来たもの、そうでないものも、食の用に立つようにと育てるものです。」

(嚶鳴館遺草 細井平洲の教え 篠田 竹邑著 文芸社)

この話を大吟醸造りに置き換えてみると、なかなか興味深いですね。現在の日本酒離れは日本酒関係者の「菊好きが菊を作る」ようにした結果が招いたことのように思えます。

ときどき見うけられるのですが、金賞をとったことがない蔵元が全国新酒鑑評会批判をすることがあります。みっともないですね。金賞をとってから批判しましょう。一生懸命になって金賞を取りにいった蔵元に失礼です。

しかし、全国新酒鑑評会で金賞をとることは難しいですが、消費者の信頼を得ることはそれ以上に難しい。このことを蔵元に認識してほしいと思います。

厳しいことを言いましたが、まずは、金賞を取った蔵元各位金賞受賞おめでとうございます

最後に一言、

「それでも日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

今日の参考文献

嚶鳴館遺草 細井平洲の教え 篠田 竹邑著 文芸社

2007年5月26日 (土)

さわりなく水の如く

さわりなく水の如く

そもそも日本酒における良酒っていったいどんな酒を指すのでしょうか?まずは次の名著における良酒の定義から。

酒質の調和だけは、日本酒に限らず世界中の酒を通じての、大切な基本的性格であるということである。これをわかりやすく表現すれば、『さわりなく水の如くに飲める』ということである。」(日本の酒 坂口謹一郎著 岩波新書)

 

 なかなかの表現ですね。「水の如く」ですか・・・。ただ、水のように飲めるのが良酒の特徴だとすれば、水で割って飲みやすくなる焼酎と比較すると、日本酒は飲みづらい感じがします。水っぽい日本酒というのもなんだか嫌ですよね。でも、上の文章に続く次の言葉が、日本酒好きを勇気づけてくれます。

「うちに千万無量の複雑性を蔵しながら、さりげない姿こそ酒の無上の美徳であろう。」(日本の酒 坂口謹一郎著 岩波新書)

「千万無量の複雑性」ですよ。これがあって「さりげない」とは。滅多にお目にかかれないです。だから「無上の美徳」なんでしょうね。

 しかし、「水の如く」が一人歩きしてしまった現実があります。

 また明日に続きます。

 

 最後に一言、

「それでも日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

今日の参考文献

日本の酒 坂口謹一郎著 岩波新書

2007年5月25日 (金)

辛口とは?

辛口とは?

甘口・辛口ってどんな酒なのでしょう?

簡単なようで難しいことがわかってきます。

甘口は、甘味を感じる酒ということで、エキス分が多い酒のことです。これは、一般的に女性が好む味といわれます。戦後しばらくは甘口全盛の時代がありました。ただ、酸が高いとエキス分・糖分が多くても辛口に感じます。

辛口は、甘口の反対の酒となります。アルコールが高いと辛味を感じるようです。いわゆる発酵を進めたものが辛口です。

しかし、日本酒の裏ラベルに書いてある辛口・甘口に違和感を覚える人も多いと思います。特に、吟醸酒などは甘く感じることが多く辛口・甘口表示があてにならない感じがします。

「コクと旨味の秘密」(伏木亨著 新潮選書)によれば、「辛味は痛みの神経で受容されますが脳に行くと辛さになります。」と書いてあり、辛味は味覚とは別の感覚であるということになります。

とすると、日本酒の辛口というときには、何らかの刺激があってなりたつ場合と単に甘くない場合とがあり、人によって使用している感覚が異なっていることになります。そもそも辛口という用語自体に混乱する原因があるといえます。

最後に一言、

「とはいえ、それでも日本酒は純米酒に戻らなければならないと考える」

今日の参考文献

日本酒百味百題(小泉武夫監修 柴田書店)

 コクと旨味の秘密(伏木亨著 新潮選書)

2007年5月24日 (木)

真の味は是れ淡なり

はじめまして。本日ブログにデビューしたちろりちょこです。

日本酒復権に向けたつれづれなる考えを書いていきたいと思います。

本日のお題は「真の味は是れ淡なり」です。

この言葉は菜根譚に書いてあり、その内容は、本当の味は薄口であるということです。後口があっさりしているということでもあります。

日本酒について考えてみると、薄口の日本酒というと辛口にあたるのかと思います。しかし、辛口の良い酒は非常にまれですね。なぜなんでしょう?

ここらへんから話を掘り下げていきたいと思います。

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