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2008年2月の12件の記事

2008年2月29日 (金)

きれいな酒は蔵もきれい

きれいな酒は蔵もきれい

昨日、仙台国際センターにおいて行われた日本食品分析センター 仙台事務所主催の講演会へ行ってきました。

テーマは「食品工場における微生物検査と品質管理について」と「食品衛生をめぐる最近の動向」の2つ。

最近騒ぎとなっている食の安全に関するこの講演会へは200名以上の参加があり、会場はほぼ満員でした。

日本酒業界も講習会など勉強の機会が多々あるのですが、他の食品工場の衛生管理方法も知りたいと思い参加しました。

最初のテーマである「食品工場における微生物検査と品質管理について」では、微生物の「二次汚染の防止」のための考えが参考になりました。

二次汚染とは、原料由来ではなく製造工程における微生物汚染を指します。原因としては、手指・器具・空気からの汚染が考えられます。

それを防ぐためには、まず、「手洗い・殺菌の励行」です。人の手にはたくさんの雑菌が付着しており、講師の方が説明した手洗いの方法はずいぶん丁寧に洗うんだな、と感じましたが、それでも雑菌がゼロにはならないのだそうです

酒造りの現場では、様々な作業をしなければならないので、毎回手洗いをみっちりおこなうのは難しい感じがしますが、こまめに手洗いをする心がけが必要なのだと再認識しました。

他にも「交差汚染」といって、履物は消毒しても台車がそのまま外から入って汚染されているところが多い、との指摘はもっともな意見だと思いました。

道具による汚染では、濡れたモノから汚染されるということで、タワシ、スポンジ、木製器具類などが考えられるということで、酒蔵で使用することの多いこれらの道具について、場合によっては、汚染源となる可能性があることを念頭に入れ、やはり、熱湯・煮沸消毒を徹底することの必要性を感じました。

この講演では、「衛生管理=危機管理」という意識が必要で「何故、それが必要か」という衛生教育を従業員に徹底させる必要がある、との指摘は、「慣れ」を生じやすい現場サイドの私のような者とって、大変勉強になりました。

私の経験上思うに、日本酒業界は、日本酒に食中毒がなく、賞味期限の設定もないので、衛生管理の考えが他の食品工場に比べ甘いような気がします

しかし、衛正管理の不備は必ず酒質に反映されます。だからこそ、クセがある酒を個性的といってもてはやすような風潮に異議を唱えます。個性とクセは別物です。

明日は、今日の続編、2つめのテーマ「食品衛生をめぐる最近の動向」の感想を述べます。これは面白い講演でした。

  

そういえば、昼に食べた「やまん」さんのチキンカレー。やっぱり美味しいですね。

2008年2月28日 (木)

杜氏の現状について その1

杜氏の現状について その1

「杜氏力」へ行く前に、前振りです。

ここで言う杜氏とは、酒造りの現場の責任者を指します。野球で言えば監督業です。

酒造りを職業として選択した者ならばあこがれるポジションです。造った酒を「これが自分が造った酒」と言える。

私は、杜氏の下の蔵人の立場ですので、杜氏としての実績がないのに「杜氏力」を語る資格があるのか、と言われると、つらいものがあります。

ただ、私は、南部杜氏、サラリーマン杜氏、オーナー杜氏の下で働いたという経験(いつか「下積力」みたいなことも書きましょう)をしているので、あくまで私の見聞きしたことの範囲ですが、杜氏の現状について述べてみるのも参考になるのではないでしょうか。

杜氏になるには実力も必要ですし、また、運も必要です。早く杜氏になりたいと思うならば、蔵を替えるという選択も考えなければなりません。しかし、確実に杜氏になれるという保証はありません。

現在、オーナー杜氏が増え、蔵元の後継者が酒造りを数年経験後、杜氏となって采配を揮うことが多くなってきました。羨ましいと思う反面、大変だなと思います。寝ても覚めても酒、酒、酒ですよ。

酒質の面で言えば、雇われ杜氏よりもオーナー杜氏のほうが断然良くなるスピードが早い!現在、市場にでてきている人気銘柄はオーナー杜氏の蔵元が多いと思います。

と言うのも、オーナー杜氏は、製造から営業、販売まで一貫して行わなければならないので、売れる酒とは何か、を真剣に考え、それを確実にトップダウンで酒造りへ還元し実行することができるからなのです。

蔵人から見ると頼もしい反面、肉体的に疲れます。当然のことながら、経営側の人は常に最高のコストパフォーマンスを要求しますので、蔵人も神経を使います。

まさに、短期決戦型の布陣がオーナー杜氏制であり、ここでは、よりよき人材確保・育成が問題となってきます。

消費者の立場で見れば、正直、市場の変化に対応できる体制である、オーナー杜氏の酒は買いだと思います。

2008年2月27日 (水)

「酒造力」の提案 その3

酒造力」の提案 その3

 本日は、「酒造力」の3つの柱の最後、③の「まとめる力」を紹介します。

 当初は、出荷管理におけるブレンドやろ過技術を想定していたのですが、一発瓶火入れ方式が普及してきている現在では、まず、発酵管理段階において酒質を「まとめる力」が必要なようです

 日本酒の味とは、「甘・酸・辛・苦・渋(かん・さん・しん・く・じゅう)」の五味の調和が取れているものが良い酒と言われています。加えて、後味が良いことが求められます。

 発酵管理が雑なところでは、「酸味」が際立ったり、「苦味」が強かったりと、非常にバランスが悪い酒となります。

 雑な管理をカバーすべく、「四段掛け」といわれる手法を使用すると、「酸味」、「苦味」が「甘味」によってマスクされ、マイルドな酒質となります。但し、後味が悪く、口の中がさっぱりしません

 一概に純米酒と言っても、この「四段掛け」をしているような酒を私はオススメできません。なぜって、あの酵素剤で糖化した液の匂いがイヤですし、酒がダレ易い。

 原材料を見てもわからない世界があるんですよ。日本酒の世界にも。

 また、山形では、発酵管理5割、出荷管理5割と言われるくらい、出荷管理の重要性を指導されています。

山形の吟醸酒が全国に名を轟かせている所以はここにあります。当たり前のことを当たり前にしているだけだと思っていますが・・・。

日本酒は、繊細がゆえにバランスを崩しやすく、まずくなりやすいと思います。

ここで必要な考えは、徒然草第110段の「双六の名人」の話が示唆してくれています。

勝とうと思って打つのは良くない。負けまいとして打たなければならない。」のだと。

香りがある酒が売れるからカプロン酸が出る高香気性酵母を使用する、これは「勝とう」とする意識ですよね。

現実は、この手の酵母を使用した酒は、管理が難しく、売れ残った場合、どう処理していいのか悩まなければならないようになります。まあ、カプダレした酒を吟醸として堂々と売っているようですが

今から「十四代」のような酒質を目指しても無理ですって。所詮、二番煎じです。

味クセのつくところ、香クセのつくところ、チェックポイントを設定し、回避していくこと

これが結局、「負けまい」とする考え、良い酒造りへの近道となるのだと思います。

出荷する酒の状態を見る、たったこれだけの作業を果たしてどれだけの蔵ができているのでしょうか。

加えて、酒質のバランスの取る「まとめる力」は、人為的なものだけではなく熟成という要素をも考慮しなければならないので、常に神経を尖らせておかなければなりません。

消費者の口元に届くまで「酒造力」が必要とされるのです。

以上のことをまとめてみましょう。

酒造力とは、基本技術に立脚した「感じる力」「引き出す力」「まとめる力」を駆使し、より良き酒を造りだす知恵である

私なりの「酒造りの思想」でした。

次回はズバリ!「杜氏力

乞うご期待!

2008年2月26日 (火)

発酵礼賛

発酵礼賛

一昨日、「フグの卵巣の糠漬け」を食べました。

話には聞いたことがあったのですが、初めての経験です。

フグの卵巣と言えば、猛毒テトロドトキシン。ぶるぶるですよ。

正直、食べて大丈夫なのかという不安がありました。

火で炙ったところ、微妙な匂いがしてきました。靴下のむれたような匂い、チーズのような匂い。

だいたいこういう匂いがする食べ物は、旨味が凝縮されていることが多いですよね。

ちょっと警戒をしながらも、口にいれたところ・・・。

「ぐわっ!うぐっ・・・、ん?旨い・・・。」

かなりの塩味を感じます。香りは、醤油のもろみに近いものがあり、奥深い味がします。正直、辛子明太子より好きな味です。

焼津の黒はんぺんを焼いた上に、このフグの卵巣の糠漬けを少し乗せながら食したところ、鰯の生臭さが消え、より美味しく食べられました。

酒の肴にはもってこいではないですか。

本当に日本酒には発酵食品が合いますね

発酵により毒を抜くということを考えた、先人の知恵には頭が下がります。

まさに「奇跡の発酵」です。

2008年2月25日 (月)

フェラーリと日本酒

フェラーリと日本酒

皆さんは山形出身の「奥山清行」氏をご存知でしょうか?

そう、あのフェラーリのデザインを手がけた国際的デザイナー

車好きではない私でも「フェラーリ」の圧倒的な存在感を感じることができます。

そのフェラーリのモノ作りの精神を伝えるのが、奥山清行氏による著書「フェラーリと鉄瓶」(PHP研究所)になります。

今年からお世話になっている蔵元の杜氏からいただいた本です。

いや、これは面白すぎる!

イタリアの文化を知るにもためになるし、やはり、一番ためになるのが奥山氏のものづくりにたいする思想の部分です。

『自分たちが本当に好きで作っていて、「自分でも買いたい」「売れなくてもいいから作りたい」と思いながら仕事をしているところは、みんながリスクを共有していると言えます。作っている人にとっては、そういう環境が一番幸せなのではないでしょうか。結果として売れなくて会社が潰れてもいいと思って仕事をしているのですから。』

売れなくては困りますよね・・・。でも、迎合しても面白くない。やっぱり、自分が飲んで旨いと思えるものを提示していきたい。

奥山氏はこうも言います。「デザインとコミュニケーション」の段で、『これからの日本で明らかに言えるのは、「沈黙は悪」ということです。』『じつは今の時代、いいものと悪いものの差はほとんどないわけです。その差を未知の相手に伝えていかないと、ものの魅力をわかってもらうことができません。』

可視的世界においてこの現状です。

では、味覚の世界ではどうなのか?

私が思うに、日本酒の飲み方というものは飲酒文化として未成熟である、と感じています。一般の人にとって、日本酒とは致酔飲料の1アイテムくらいの認識でしかなく、また、日本酒を少しきき齧った程度の人が適当な薀蓄を語り、間違った情報を垂れ流しています。マスコミによる日本酒の情報も怪しいものがあります。

はっきり言って、日本酒の世界において「旨い」、「まずい」の判断レベルが非常に曖昧です。

ここに造り手の迷いが生じている原因があります

物事には順序があり、いきなり極めることができる人など存在しません。ただ、適正な知識と経験を積めば、開けてくる世界がある

私は、そういう形を日本酒の飲酒文化として確立していきたいと考えています。

圧倒的なクオリティを持ち、経験を積んだ飲み手にわかってもらえる酒質の提示。こういう観点からのアプローチがあってもいいのではないでしょうか。

日本酒界のフェラーリ

目指すところはそこですよね。杜氏!

2008年2月24日 (日)

「酒造力」の提案 その2

酒造力」の提案 その2

よく考えたら、酒造技術者ではない皆さんに「酒造力」を語って何になるのか?

まあ、一酒造技術者の独り言だと思って聞き流してください。

本日は、②の「引き出す力」。

実は、鮭野夢造さんご批判の、このブログの根本にある「蒸米偏重主義」はこの思想にあるのです。

技術の果てはどこにいきつくのか?

過去の歴史を見ると、戦前の品評会時代には既に「活性炭の過度の使用」による水のような酒の登場があり、戦後になると、「ヤコマンの登場」による鑑評会の混乱、そして、現在の高香気性酵母使用による「飲めない」大吟醸の登場

技術の果ては、いつも嗜好とは離れた極端なものになっていく傾向があったということです。

酒造りの学理究明には、まず、1段階の腐造をなくすという段階がありました。ここでは、醸造試験所、鑑定官室が果たした役割は大きかったと言えます。最たるものが、江田鎌治郎氏による速醸酛の開発です。

大正3,4年の大腐造の経験を経て、急速に学理究明が進み、昭和の前半までには杜氏の秘技とされた酒造技術がかなり解明されたように見えます。

造れば売れる時代に「旨い酒を造る」ということは、監督省庁であった大蔵省税務監督局鑑定部の至上命題ではなかったのではないでしょうか。

しかし、そんな中で東京税務監督局鑑定部の鹿又親氏は、商品としての一定規格を目指し、「科学主義的工業酒造の確立に就て」(醸造論文集第五輯2 昭和13年)の中で、当時の酒税法で焼酎が清酒原料の一つとして認められているのに、実際に原料として認めていない現状を批判しています。(認められていた量は醪の1%以内!であったそうです。)

出来る酒から造る酒へ一定規格を造り出すために「アルコール添加」の必要性を説いた鹿又親氏の考えは、当時としては斬新で尊重できます。但し、注意しなければならないのは、ここで想定されていたのは、米から蒸留された焼酎だった可能性が高いということです。

まさか戦況悪化による米不足により、なし崩し的に昭和17酒造年度から米を原料としないアルコールの添加(当初はサツマイモが原料)が始まり、現在では90%の酒が醸造アルコール(「サトウキビ産地で廃糖蜜から造りだされる粗留アルコール」が原料)添加になるとは想像できなかったのではないでしょうか

この鹿又親氏が率いた東京税務監督局が「米の旨味は酒の旨味」と言う標語を用いて「完全なる蒸米」の指導していたことは前にも述べました。

戦後しばらくたつと、酒造技術書からこの標語は消え、佐藤信氏の影響により、「旨味」という味の分類が消えます昭和24酒造年度においては、三倍増醸酒が認められ、甘味はあるが、旨味のない日本酒が闊歩することとなるのです。

最近になり、佐藤信氏の影響が薄れ、酒造技術書の中に「旨味」の記述が出てきました。しかし、まだまだ真に旨味のある酒は少ないと思います。

酒造技術書に頼った技術のみでは、「旨味」のある酒は復活しない

そこから必要となってきたのが、「完全なる蒸米」から「旨味」を「引き出す」という戦前の発想なのです。

酒化率を求められた時代は終わり、粕歩合が高くてもより旨いものを求められている現在、基本技術の上に立脚した「+α」の部分が、これから酒造技術者に求められる「引き出す力」なのだと思います。

  

「造る」という考えよりも、より謙虚に原料に向かうことができるのが「旨味を引き出す力」。

  

そこでは、あくまで「農」が主役なんです。「酒が旨いのは米のおかげです。天と大地と水の結晶が日本酒です!」と素直に言えるようにしたいですね。

  

いや~、長い長い。

でも、私がこういう発想に至ったのは、山形という常に新しい技術を学べる場所にいることができたおかげだと思っています。

参考文献

 醸造論文集第五輯2 日本醸友会(昭和13年)

 日本酒のすべてがわかる本 穂積忠彦著 健友館(平成元年)

2008年2月23日 (土)

「酒造力」の提案 その1

酒造力」の提案 その1

昨日は、このブログが鮭野夢造さんのHPに取り上げられたおかげでアクセス数が過去最高を記録しました。

 

昨日更新されていたヤコマンの記事には、恐れ入谷の鬼子母神。ヤコマンとアル添の意味の考察には同感です。

鮭野夢造さんのHPで目が肥えている皆さんには、刺激が足りないブログかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。

さて、本日は過去のメモ帳に書いてあった「酒造力」というものをご紹介したいと思います。

私の考える「酒造力」の3つの柱は、

       感じる力(ちなみに、山形では「まるいち」と読まず「いちまる」と読みます)

       引き出す力

       まとめる力

 本日は、①の「感じる力」の説明をします。

 まず、「感じる力」とは、酒造技術者は、常に五感を鍛える必要があるということ、を意味します。

まず、良い技術者とは、優れたきき酒能力ありき、です。もって生まれた能力もありますが、きき酒能力は経験によって鍛えられます。

 きき酒能力向上には、普段の食生活も大事です。毎日飲む味噌汁に、ダシを取らず、ほんだしの味しかわからない人の舌には、日本酒の繊細な味わいがわかりづらいと思います。

 あと、もちろん、タバコもダメです。まずもって、タバコを吸っている人が造った酒を飲みたいと思います?同じ業界にいても何だか飲む気がしないんですよね。

 私が過去、出荷管理の担当をしていた時は、仕事のある前の日には、カレーや辛味のある食べ物は食べないようにしていました。食べると「旨味」の感じ方が鈍くなってしまい、「雑味」が多い、「濃い味」の酒になってしまうのです。

 加えて、酒造りにおける様々な「感じ」というものは、各作業において重要です。たとえば、蒸米の香り、蒸米の掘りやすさ、手触り、味わい、毎日違います。

 機械の音というのも現場では重要です。いつもと違う音がしたら何だろう?と反応しなければいけません。

酒造りとは、「感じ」と知識のすり合わせにより、より良い経験知を得ていく知的作業なのです

 ということで、今日は「酒造力」の根本である「感じる力」を紹介いたしました。

2008年2月22日 (金)

もし中村政五郎氏がいなかったら・・・

もし中村政五郎氏がいなかったら・・・

今日は、久々に酒造技術史ネタでいきましょう。

このブログでは、私が歴史に埋もれていた「中村政五郎」氏を引っ張り出し、過去何度か取り上げてきました。

山形県の生んだ偉大なる酒造技術者

この人がいなかったら、現在に、「生酛(きもと)」は存続していなかったのではないか、というお話です。

過去の記事では、「中村政五郎」氏が「江田鎌治郎」氏開発者の速醸酛に噛み付いたり酒の神様「野白金一」氏に論争で敗れたりしたことを書いてきました。

仙台税務監督局鑑定部長を勤めた「山田滋郎」氏が書いた本、「酒造七十年の回想」に中村氏の業績を伝えるものがありましたのでご紹介します。

「前述の通り主税局の慫慂により、当時新醸法(速醸酛、山廃酛)は全国的に拡大普及の勢いを示したが、ただ大阪税務監督局内就中(なかんずく)灘地方の如きはこれに対し、易々と賛成しなかったのである。(中略)、当時の大阪局鑑定部長の中村政五郎先生は、酒造技術にかけては、就中酒造実技方面にかけては大権威者であり、当時全国的に覇を謳われた丹波杜氏の集団から神様の如く尊崇された大先生であり、本場灘の一般醸技に対しては、偉大なる指導力と号令力を持っていたのである。」

「この人が醸造試験所発案の新醸法に対し、かなり痛烈に技術的見解と批判を下したものである。」

中村氏の技術的な批判の内容は省略しますが、著者の山田滋郎氏は「酒造薀蓄の偉大なる人でなければ下し難い見解」と評価し、中村氏が主税局から白眼視されても主張を曲げなかったことを「絶賛に値する」と言っています。

しかし、中村氏は大阪局から名古屋局へ転勤を命ぜられます。このことに関し、山田氏は、主張を曲げようとしない中村氏に対し、主税局が指導方針を貫くために行った処置ではないか、と推測しています。

「若し、そうだとすれば中村先生の自己抱懐の技術的信念が如何に強いものであったかを裏書されるものであって、筆者は却って尊敬の念を増すのみである。」

守るべきものは何なのかを知っている人間って本当に偉いものだと思います。

山形県鶴岡市出身の中村政五郎氏に流れるスピリットは、官軍に頑強に抵抗した庄内藩の気概に通ずるものを感じます

その中村氏が最後にいきついた境地、それが「蒸米の重要性」!

参考文献

 「酒造七十年の回想」(山田滋朗著)(喜久水酒造株式会社)(昭和30年)

2008年2月21日 (木)

「えが茶ん」

「えが茶ん」

昨日、江頭2:50さんがプリントされたお茶「えが茶ん」が、人気が出ているというニュースを見ました。

商品コンセプトというかインパクトと話題性では、文句なしの商品なのではないでしょうか。

「ねずみ男汁」に近いものを感じます。

マーケティングは、消費者との心理戦であり、注目されかつ手に取ってもらい口コミで伝播する形をとり、希少性が出るとますます人気となる。その循環を生みだす工夫が必要となります。

飲み物と江頭2:50さんとのコラボレーション。普通、商品化する発想は浮かばないですよね。しかし、平和な時代に求められる「キワモノ」的要素に満ち、ニュースとして取り上げられました。

以前はパーキングエリア限定ということでしたが、全国販売されるのでしょうか。早く実物を手に取ってみたいものです。

そういえば、江頭2:50さんのインターネットの動画を観ていて気づいたことがありました(腹がよじれるような動画ばかりありますよね)。

ある人物との共通点を見出してしまいました。

その人物とは・・・、おととい話題に出た「ボブ・ディラン」!(ディランファンに刺されそうだ)

「嫌がらせ」、「笑い」、「芸人魂」、「パンク」、常にサービス精神旺盛な道化師で、自分のポリシーを貫き通す生き様

生きる世界は違えども流れるものは一緒。「キモ面白い」存在を演じきっています。

私は最近、江頭さんはテレビという枠では扱えきれないくらい凄い人なのではないかと思い始めています。映画批評本を出したり、年を重ねてますます面白く、存在感を増している感じがします。

本日2月21日は、月2回インターネットで動画配信されている江頭2:50のピーピーピーするぞ!の更新日となっています。江頭さんのトークの上手なことに驚きますよ!必見!

2008年2月20日 (水)

仮名「虎の穴」開店へ向けて

仮名「虎の穴」開店へ向けて

昨日、税務署の酒類指導官のかたが、今春からスタートする酒屋、仮名「虎の穴」の現地調査に来ました

12月に書類を提出してから、なかなか免許が下りず、やきもきしておりましたが、いよいよ目前に近づいてきたようです。

もったいぶって申し訳ありません。

要は、酒類小売業免許の申請を行っていたということです。

今、「酒屋さん」を開業して何をしたいのか?

まず、蔵人が直接売る純米酒専門店としてスタートし、日本酒を本来の姿に戻すことを目指します

私は、日本酒の造り手として今年で11期目となり、経験した蔵元は3蔵(山形と宮城)5人の杜氏の下で、蔵人として現場を見てきました。現場で学んだことや技術者の勉強会で学んだこと、過去の文献にさかのぼっての確認などをしてきました。

業界には業界の常識というものがあり、アル添技術というものに対し肯定的なのが一般的な考えであり、日本酒という名の酒のうちアルコールを添加したものが9割を占める状態です(平成17年醸造年度において)。つまり米だけからできる酒は10%にすぎないということです

本物・良心・食文化の担い手として日本酒の蔵元は尊敬される存在です。しかし、現状はと言えば、「日本酒は米からできた酒である」という漠然とした一般の人のイメージの上にあぐらをかいているという状態で、昨年ようやく三増酒をお上に言われて止めた有り様です(山形は三増酒を造っている蔵元は少なかった・・・と思います)。

私は、人は「真・善・美」に向かう本能を持つ生き物だと信じています。当然、食に関しては「うまさ」への絶えざる欲求がある。

果たして日本酒業界は人間のあり方まで考えてやってきたのだろうか?売ること、造ることだけで頭がいっぱいだったのではないか?

人のあり方に対し、誠意をもって対応することが「日本酒復権への第一歩」だと思っています。

私は、日本酒の蔵元と消費者の橋渡し役の「酒屋さん」という現場で、実践を通じ、純米酒の魅力を伝えることで、この業界の地図を塗り替えたい!

少なくとも日本酒市場の8割は、純米酒となるよう頑張りたいと思いますし、また、そうでなければならないと考えています

ということで、山形という日本酒において恵まれた環境で「酒屋さん」が出来る期待と喜びで興奮しています。

まだ見ぬお客さんとの出会い、自分で造った酒を手渡しで売ることができる、想像しただけで最高の気分です。

しかし、ビールもない店に、本当に客が来るのかまわりに心配されています・・・。

ブログを見ている皆さん。今春から始まる仮名「虎の穴」応援よろしくお願いします

そういえばDANCYUの3月号は純米酒特集をやってますね。ぜひご覧ください。

2008年2月19日 (火)

ディランを語ろう

ディランを語ろう

本日紹介する、漫画家の浦沢直樹氏とミュージシャンの和久井光司氏との対談集「ディランを語ろう」(小学館)は、今からディランを聴こうとする人にオススメの入門書です。

ボブ・ディランは、ビッグネームにもかかわらず、日本ではあまり人気がないように思えます

一般的に初期のフォークのイメージが強く、「グレイテスト・ヒッツ第Ⅰ集」あたりを買って気に入った人でも、「フリーホイーリン」、「時代か変わる」を続けて買って、あまりの重さに辟易してしまい、それではとロックへ移行したといわれた「ブリンギング・イット・オール・バックホーム」を買ってみるとこれもまた聴きづらく、「ディランって難しい・・・」って思い、そのまま挫折してしまう人が多いのではないでしょうか。

メロディーで言えば70年代へ入ってからの「ニュー・モーニング」なんかがオススメで、あまり重要視されていない「セルフ・ポートレート」が私は一番好きです。(この本のおかげで好きだと口に出して言えるようになりました・・・)

「セルフ・ポートレート」は、もうなんだかすき放題のやり放題ってな感じで、すごく緩いのですが、その緩さ加減が最高です。エヴァリー・ブラザーズの「マリーへの伝言」、サイモン&ガーファンクルの「ボクサー」のカバーは、本当に笑ってしまいます普通やらないですよ。でもやってしまう。そんな人なんです、ジンマーマンという人は。

ボブ・ディランを長く聴いている人と言うのは、ディランの「裏切り」、を繰り返し味わい、「諦め」の境地に至り、「しょーがないな、このおやじは」と笑ってやり過ごせる、広い度量をもった人たちではないでしょうか。そんな二人の対談集。面白くてためになりました。

ディランのことをなんだかんだ言っていますが、みんな共通して思っているのは、「かっこいい」ということではないでしょうか。かっこいいディランを感じると、やみつきになってしまうんですよね

食わず嫌いだった人も是非「ディランを語ろう」を読んで、ディランに触れてみてはいかがでしょうか?

しかし、「ボブ・ディランだったら、どんな酒を造るのだろうか?」などとつい考えてしまう私は、どこに向かうのか?

答えは風に舞っている~♪

2008年2月14日 (木)

四十八茶百鼠

四十八茶百鼠

江戸時代は「いき」な文化が花開いた時代。

九鬼周造の「いき」の定義は、「運命によって〈諦め〉を得た、〈媚態〉が〈意気地〉の自由に生きるのが〈いき〉である」となっています。

字面だけを見てもいまいちピンと来ないですよね。

具体的な例を挙げたほうがわかりやすいと思います。例えば「いき」な色とは?どういう色だったのか。

本日の題にある「四十八茶百鼠」は、江戸時代後期に流行した色を表します。茶色、鼠色に代表される原色ではない中間色のバリエーションが多かったことを指すこの言葉

江戸時代には「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」がたびたび出て、贅沢をすることを制限され、着る服の色にも制限があったそうです

そんな運命を逆手にとって、渋い色の微妙な差を楽しむ知恵が働き、「いき」な文化にまで昇華させた我々の先祖には敬意を払わざるをえません

制約が多かった江戸に生きた人たちは今の時代よりも、よほど充実した日々を楽しく、幸せに暮らす知恵があったように思えます

日本の伝統色と名前の由来を調べると結構面白い発見があります。

視覚は現象として捉えやすいことが多様性につながったのでしょう。

味覚の場合はどうなんでしょうか?

 次回、味覚における「いき」な味の考察に挑みたいと思います。

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