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2008年3月の16件の記事

2008年3月28日 (金)

「日本酒復権」をかけた冒険の旅の始まり

日本酒復権」をかけた冒険の旅の始まり

oogleで「日本酒復権」でキーワードを検索すると、このブログが1番目になっていることに気づき、内心うれしくもありますが、ちょっとビビってしまいました。

いざ、日本酒復権をかけて具体的に行動するとなると、本当に思いを伝えられるのか不安を感じます。

しかし!

私が両手に持った刀と楯があれば、「日本酒復権」をかけた冒険の旅の始まりには充分だと言えます。

「刀」と「楯」

「刀」とは、名刀の切れ味を誇る正宗、「山形正宗」。

 「楯」とは、どんな酒と比べても貫くことのできない楯、「楯野川」。

 この2つの銘柄を両核として冒険を始めます。

 私がブログで述べてきたことを真摯に実行されている両蔵元の酒は、まさに直球勝負の酒。ポスト十四代を狙えるポジションに確実にいます。

 酒質向上への設備投資を積極的に行っており、特に、冷蔵設備にはお金がかかっています。だからこそできる脱カプの酒

 まるでんさん、ばんこう花さん、などの日本酒に造詣の深い飲み屋さんも勘違いしていたことがわかったのですが、「山形正宗」がカプロン酸系の香りの酵母を使用し派手なイメージだと。

 しかし、「山形正宗」の杜氏はカプ系の酒が大嫌いです。飲んでおいしい酒を追求しています。重油高の現状の中、「銭勘定より米完蒸」を実践し、蒸し時間を延長しました。なかなか出来そうでできないことなんです。

 消費者は香りのある酒が良い酒だと思っていますが、香りの質を見極める必要があります。

「脱カプ」をすると、インパクトがなくなる分、初心者には受けがあまりよろしくありません。だからどの蔵もやめられないんですよね。

米からできる酒に酵母に無理矢理ださせた香りは必要ありません。アルプス酵母の出現以来、日本酒の売り上げが減少が続いているのも偶然ではないと思います。

ということで、「山形正宗」、「楯野川」を持って、いざ、「添加取り」の冒険の旅へ

「天下取り」から「添加取り」・・・。現実を前にちょっと弱気になっています。

応援よろしくお願いします。

2008年3月27日 (木)

穴窯

穴窯

私の店舗は、山形市平清水という陶芸の里に開店します。

現在、5つの窯元があり、休日になると陶芸教室でにぎわう「七右ェ門窯」の敷地内での開店となります。

Photo店舗の外観。

開店予定日は42日予定

開店が間に合うのか心配です・・・。いや、忙しいです。

さて、今「七右エ門窯」では、「穴窯」の窯焚き体験の案内をしております。Photo_4

4日間炎を燃やし続ける作業。真夜中に映し出される白っぽい炎の色は幻想的です。アカマツを用い、高温の炎から作り出される作品は、開けてみないと出来がわかりません。窯変が出たら感動ものです。

窯焚きの体験が出来る機会はそうそうありません。

私も2回ほど体験したことがありますが、大吟醸造りに近い感じがしました。炎と土のロマン。Photo_3

今回もお酒をチビチビやりながら、窯焚きの手伝い(邪魔って言ったほうが合っているような気が・・・)をしようと思っています。

奮ってご参加ください

2008年3月21日 (金)

よろしく焦臭(こげしゅう)

よろしく焦臭(こげしゅう)

「逢えない時間が、酒焦げ付かせるのさ♪

栓をあけると、君がいる・・・よろしく焦臭!」

ってなことにならないよう、火入れ作業は目を離せなく、大変気を使います。

今期からお世話になっている蔵では、ほとんどが瓶火入れという、酒にやさしく、人には厳しい作業が続いています。3日続けてやると、体がバリバリしてきます。

火入れのタイミング、方法によって酒質は大きく変わります。むしろ、一番酒質に差が出てくるのは、この作業なのではないでしょうか

瓶火入れ」という手法は、手間がかかり、瓶を置く場所にも困ることから、通常は吟醸クラスに用いられる手法です。

 通常は「蛇管(じゃかん)」によるタンク受けによる火入れ、またはプレートヒーターによるタンク受けによる火入れにより、熟成をまつこととなります。

タンク受けの火入れの場合、一日で1年分の熟成がくるそうです。火入れ後の酒は、緑色から茶色へと変化します。ピチピチギャル(他にたとえが浮かびませんでした・・・)から皺くちゃお婆さんです。当然、化粧が必要となってきます。日本酒のほとんどがタンク火入れという現状・・・。

 東京の長谷川酒店さんが他の小売店を圧倒できたのは、この火入れ方法による酒質の差にいち早く気がつき、蔵元と意見交換しながら、かつてはなかったフレッシュなタイプなお酒を消費者に提供できたからだと思います。

 私が今度開店する店のオリジナル酒は、当然、「瓶火入れ」の純米酒です。そうすることで、最初から飲みやすく、かつ、酒の熟成というものを素直に体験できるようにしたいのです。日本酒も熟成を楽しめるという、醸造酒として当たり前のことをわかっていただきたいと思います。

 はっきり言います日本酒は、安いなら安いなりの味しか望むことはできません。美味しくあるためには手間がかかり、コストもかかることになります。

 私は、「工業製品」ではなく、造り手の「作品」を紹介していきます。当然、それなりの値段がします。

 ただ、晩酌できる値段帯というものがあるので、当店オリジナル酒は、その範囲内で提供していきたいと思います。

 酒質、値段を通じて、「純米酒としてあるべき基準」を提示していきます。

 まもなく、その全貌が明らかになります。

 楽しみにしてお待ちください。

2008年3月20日 (木)

200回記念!「おおきなかぶ」

おおきなかぶ

ちろりちょこは、ふしぎなかぶをかいました。

おおきくなったり、ちいさくなったりするかぶです。

「おおきな、おおきなかぶになれ。」

かぶはどんどんおおきくなっていきました。

ちろりちょこはかぶをうって、そのおかねでまたかぶをかうことにしました。

「こんどはオレンジいろのかぶ。おおきな、おおきなかぶになれ。」

ところが、かぶはちいさくなっていきます。

ちろりちょこは、おなじかぶをまたかいました。

「これでかぶが二つ。おおきくなったらおおもうけ。おおきくなあれ。」

また、かぶはちいさくなりました。

ちろりちょこは、3たびオレンジいろのかぶをかいました。

「しめしめ、かぶはいまがいちばんちいさいとき。おおきくなったらおおがねもち。おおきくなあれ!」

どんどんかぶはちいさくなり、とうとうらっきょうくらいのおおきさになってしまいました。

それをみていたちろりちょこはやっときがつきました。

あ~あ、かぶのべんきょうよりかびのべんきょうをするべきだったのに。

らっきょうほどのかぶをうったら、てもとにはわずかなおかねしかのこっていませんでした・・・。

やまがたのおはなし より

2008年3月18日 (火)

オリジナル

オリジナル

ブログを色々見ていると、もともと誰が言い出した意見なのか、何が元ネタなのかわかりません。

ここに書いた自分の意見なども以前に見たブログ・HPなどから自然と影響を受けていたりと後から気づいたりすることもあり、オリジナルの考えというものが存在するのかどうか、疑わしい感じがします

ただ、プロの書き手において盗作と認定されることは、プロの書き手として失格の烙印を押されることとなります

先週、直木賞作家の熊谷達也氏が他人の作品を無断引用したとの残念なニュースが流れました。

熊谷達也氏も気仙沼とかかわりの深い人物です。

熊谷達也氏が中学教師として気仙沼中学校へ赴任していた時期があったそうです。

その時の行きつけの飲み屋が、居酒屋「佐武」

マンボ通りの真ん中にあります。

ここの主人がまたゆるい!

やる気があるんだか、無いんだかわからない独特の雰囲気。

地元の酒も取り揃え、つまみの数も多いので、結構楽しめます。

「佐武」の近くの焼き鳥屋「○安(まるやす)」の「やきとり」(実は色々なモツを一本の串にしている変わり種)は、串ばなれの良さが際立つオリジナリティー溢れる個性的な焼き鳥で、いつも地元の人でにぎわっています。

また、気仙沼ネタ。

オリジナルでありつづけることの難しさを感じます

2008年3月17日 (月)

よし!獅子は来た

よし!獅子は来た

「よし!獅子は来た。わたしの子どもたちは近くにいる。ツァラトゥストラは熟れた。わたしの時は来た。

 これはわたしの朝だ。わたしの昼がはじまろうとする。さあ、来い、来い、大いなる正午よ!」《「ツァラトゥストラはこう言った」ニーチェ著 氷上英廣訳(岩波文庫)より》  

 お待たせしました!

 とうとう酒販免許が下りました

 伝えなければならないこと、やらなければいけないこと、どんどん進めていかなければいけません。

 実を言えば、6年ほど前に「ちろり猪口のかく語りき」というHPを立ち上げたのですが、元来ものぐさなたちなもので、更新をせず、ほとんど3日坊主で終わった経緯がありました。

 ちろり猪口が日本酒業界に一言モノ申す!というスタンスだったのですが、その当時は「熟れた」状態ではなく、たいしたネタも持ち合わせていなかったのです。

 ブログを始めて、まもなく200話になろうとしています

 習慣が人を育てるといいますか、ブログという習慣が、次のネタを作り出す原動力となっているようです。

 4月以降は、ご紹介する商品の説明や蔵元の思いというものに焦点をあて、より深く日本酒を味わえるような話題を提供していきたいと思います

 しかし、店で紹介する蔵元の数が少なすぎる・・・

 全国にまだまだ埋もれている旨酒があったら、是非、教えてください

 アクセス数が多くなっているのですが、コメントがないんですよね。勇気をもってコメントお願いします(苦笑)。

2008年3月16日 (日)

風待ちろまん

風待ちろまん

先日、「自虐の詩」のDVDが発売されました。

幸江の幼少期を過ごした舞台となった気仙沼。

映画での気仙沼は、貧乏臭さの象徴として描かれていました。

実際、魚町、南町あたりの旧市内は人通りも少なく、どこの地方都市に見られるシャッター通りで、電線の数の多さだけがまた、物悲しさを一層漂わせています。

ちょっと高台に昇ってこの町を見下ろすと、潮風にやられたトタン屋根の錆が、無残な姿をさらけ出し、退廃的な雰囲気を醸し出しています。

山形の人は勘違いをしていて、「私が気仙沼から来ました。」と紹介すると、「あっちは暖かくていいですね。」などと言われます。冬の気仙沼は晴れの日が多いのですが、風が冷たく吹き、肌がヒリヒリ痛みます。

しかし、春になると風もおさまり、内湾に映る陽の光が眩しく、散歩するには最高のロケーションです。

はっぴいえんどの「風をあつめて」が似合う街

昔、気仙沼の内湾一帯を「風待ち(かざまち)」と呼んだそうです。

この時期、地元の人でもわからない楽しみがあります。今の時期から4月初頭にかけ、散歩する人にしかわからない楽しみ

気仙沼に行く機会があれば、内湾の水面を見ながら散歩してみて下さい七色に光り輝く生き物を見つけることがあります。

その名も「ウリクラゲ

これは、びっくりするほどきれいです。おもわず見とれてしまいます。

また、散歩した後に御腹が空いたら、お薦めなのは、割烹「扇屋」のうなぎ

本当にここのうなぎの凝縮感は凄い!私は江戸前のグズグズした蒲焼を正直、好みません。ここのうなぎの蒲焼は食感がいいんですよ。またタレも絶品です。

気仙沼は寿司よりもうなぎでしょう。

気仙沼は、山の幸あり海の幸ありの食のワンダーランド

今年の春は気仙沼へ行こう!

2008年3月15日 (土)

月に吠える

月に吠える

飲み過ぎたときに感じる、「ゆらぎ」

酔っ払った頭に浮かぶ、「これが地動説なのか?」

月が出た、太陽が昇る、日が沈む、日常はどう考えても天動説で説明がつく

地動説が役に立つのは、どんな場面が考えられるのか。

酔っ払っていない時、私は地球が動いているという実感が、イマイチというか全然湧かない。

何で天動説で悪いんだ?

科学とは真理の体系ではなく利用可能性の体系。

地動説が真理なのではなく、今のところ、反証できないだけだ。

生きているうえで実感できない説には、常に疑ってかかったほうが無難だ。

純米酒、純米酒と言われても、アルコール添加でも旨けりゃいいんじゃない、別に。

そう実感しているのなら、その考えは尊重できる。天動説を堂々と言えることは素晴らしい態度だ。

純米酒信者と言われる人は、ある意味、「地動説」を真理と振りかざす単純科学信奉者の思考に似ている。俺は真理を握っているんだと。やれやれ。

じゃあ、何で純米酒だけを売るんだ?

答えは簡単。

純米酒がアルコール添加した酒よりも旨いから。はっきり言って、わたしも天動説。旨けりゃいいんです。

何を言っているのか、さっぱり分からない?

だって、私は馬鹿だも~ん

と、今日は散文詩調で書いてみました。まだ、酒が残っているようです・・・。

2008年3月14日 (金)

インド人もびっくり!?

インド人もびっくり!?

狂牛病で日本中が大騒ぎしていた時にひそかに震えていた業界がありました。それは、日本酒業界です。

先日、お話した表示の必要のない食品添加物であるゼラチンを使用していたところがあったからです。このゼラチンが牛から抽出されたことがわかったのです。

日本酒造りになぜ、ゼラチンが必要なのか?

出荷管理の際、「オリ下げ」という工程を行うことがあります。このオリ下げの一般的な方法に、柿渋―ゼラチン法があります。これは、先に活性炭を使用し、柿渋によるタンニンで凝集し、さらにゼラチンで大きなフロックを形成し、沈殿させる方法です。

オリ下げは、出荷以降の白ボケ対策として、また、瓶詰め時の作業効率の良さから規模の多きい蔵にとって必要な作業でありました。

狂牛病問題発覚時、ゼラチンの製造元に安全性について問い合わせました。

製造元からは、「うちはインドの牛を使っているので大丈夫です」という回答がありました。

インドの牛って聖なる動物じゃないのか・・・

インドではビーフカレーがありません。しかし、日本酒にビーフが入っている!

インド人もびっくりです

その後、ゼラチンの製造元からは、「魚から抽出したゼラチン」に変えましたとの連絡があった覚えがあります。

大手の蔵は風評被害を恐れ、ゼラチンを使用するのをいち早くストップしたそうです。

説明が釈然としなかったので、その時在籍していた蔵でもゼラチンからキトサン系濾過助剤へ切り替えました

食品添加物の原料から安全性を証明していくことの必要性を感じた出来事でした。

2008年3月12日 (水)

杜氏論

杜氏論

 以前予告していた「杜氏論」にようやくやってきました。

 私は杜氏をしたことがないので、「杜氏力」という題に違和感を覚えたので、「杜氏論」としました。以前、楽天の野村監督が憧れの存在だった巨人について語った「巨人軍論」を出しましたね、その時の野村監督の心境に似た気持ちかもしれません。

かつての「憧れ」と「失望」そして「こうあるべき」であって欲しいと

それでは始めましょう。

戦前の「蒸米研究の聖地」、鹿又親氏が率いた東京税務監督局鑑定部の指導下で配布された「酒造工人必携(戦後は「酒造技術者必携」と名を変えた)及び「酒造工場管理法」には、杜氏の心構えが書いてあります。

 本日は、「酒造技術者必携」から「杜氏心得」の十ヶ条を引用し、私の「杜氏論」を展開したいと思います。

第一 杜氏は品性の陶冶に努力しなければならぬ

 「酒造技術者必携」の中で、酒質は杜氏の品性の反映である、と結論しています。古くさい精神論みたいですが、私もこの考えに賛成します。ダメな酒を造る杜氏は、品性も卑しく感じられるものでした。

 

第二 杜氏は其の職責の重大なるを知り常に言行を慎まねばならぬ

 まさしくその通りで、常に蔵人は杜氏の言動を見て評価しているのです。信頼できる杜氏さんでなければ、蔵人は返事では「ハイ」と言っても、心の中では「ハイハイ」と言って聞き流しているのです。

第三 杜氏は凡ての仕事に対し公明正大でなければならぬ

 技術を出し惜しみするな、コソコソするな、ということでしょうか。

第四 杜氏は経営者(主人)と従業員(蔵人)との連絡を円滑ならしめ、一致協力 常に 朗な気持ちで働かねばならぬ

 従業員(蔵人)の不満をうまく操縦するのも杜氏の大きな役目です。良く言われる「和醸良酒」、標語になっているということは、逆に、「人の和」の難しいことを教えてくれているように思えます

当時は、オーナー杜氏を想定していないようですが、昔は蔵人の利益代表が杜氏でしたので、経営者側との交渉役としての力量も問われたのではないでしょうか

第五 杜氏は蔵内作業の統制を計り常に能率増進を心懸けねばならぬ

 要は、「段取り力」を磨こうということでしょう。

第六 杜氏は従業員(蔵人)を指導訓育し、其の素質改善に努力しなければならぬ

 はっきり言って、この業界には良い人材が来づらい現状にあります。季節雇用で重労働、その割には給料もさほどではない。やる気があって入っても、改善に向かう努力を怠っている蔵が多いので、不満が溜まることとなり長続きしません。雇う側、雇われる側両方に問題を抱えています。

私が考えるに、普通の職場だと思ってはいけないのです。

では、何なのか?

それは、「酒造り=神輿担ぎ」です。寒い時期になると、酒造りの好きな人が集まって酒造りを楽しむ、趣味でやってると思えば何でも我慢できるものです。

教育するよりも採用する時の経営者側の条件提示が重要だと思います。結局、我慢して酒造りをしている人たちは酒造りを楽しむ人たちには勝てないと思いますので、有効な考え方ではないでしょうか。

ただ、そんな楽しむ人たちを統率するリーダーたる杜氏に威厳がなければ、まとまりがつかなくなるので杜氏の「叱る力」も必要です。

第七 杜氏は常に経費を節約し、生産費の軽減を計らねば図らねばならぬ

 必要のない電気は消す、当たり前の心がけです。ただ、酒質の劣化につながる省力化は避けなければいけません。いったん、省力化した工程をもとに戻すには必ず抵抗があるものです。例えば、50分蒸しを60分蒸しに変えることすら難しいのが現状です。

第八 杜氏は常に酒造技術の練磨に精進し、世の進歩に後れない事を期し現状維持は即退歩ということを知らなければならぬ

 

○○杜氏の皆さん、心当たりありませんか?

第九 杜氏は学理の研究に精進し、酒造技術の基礎を確立することに努力しなければならぬ

基礎は重要です。「慣れ」は恐ろしい結果を招くことがあります。昭和23年の大腐造は腐造など昔のことだという慢心もあったようです。何でこうなるの?を常に頭に入れておく必要があるようです。

笑い話として伝わっているのが、酒母への培養酵母の添加の話で、担当者が変わったら酒母が沸きついてこなくなったという蔵があり、原因を探ったら、培養液の上澄みだけを入れ、瓶の底に沈んでいる酵母を捨てていたという話を聞いたことがあります。これは、漫然と作業を行っている典型と言えます。

第十 杜氏には其の醸出する清酒に対する責任が醸造中のみならず、販売を了する迄存続するものである

 出稼ぎ杜氏にありがちなのですが、酒を造った後は従業員におまかせ、というような考えがあります。酒造会社の社員は、熟していく酒をどう処理し、どう販売していくかで頭を悩ませています。酒の出来が悪いと出荷管理も大変なのです。酒造りのプロとして消費者の口元まで届く最後まで責任を取る覚悟のないものは杜氏失格です。

 以上、「杜氏論」を書いてみました。いつにも増して精細を欠きますね。杜氏をしたことのないものに杜氏を語らせてはいけないということかもしれません。

参考文献

 酒造技術者必携 日本醸友会東京支部編 (昭和25年)

 酒造工場管理法 日本醸造協会関東支部(昭和9年)

2008年3月 7日 (金)

杜氏の現状について 三州は山の中!

杜氏の現状について 三州は山の中!

最後は、季節雇用の杜氏です。

一般的なイメージは、酒造りの時期になるとやってくる、杜氏が引き連れてくる技術者集団、そんなところだと思います。

伝統に裏づけされた確かな技術。酒造りの奥義を極めた熟練の技が醸し出す酒は、まさに極上の一滴・・・、って幻想じゃないでしょうか?

こう言ってしまうと身も蓋もないのですが、一歩間違えれば単なる出稼ぎ集団です。

本業は農家。酒造りは農閑期になるとやってくる割のいい副業。普段は誰にも相手をされなくても、酒造りになると酒飲み連中から尊敬の眼差しで見てもらえます。

酒造りの知識は時代遅れのものが多く、思い込みと怠惰の結晶が経験という名のオブラートに包まれ、市場の変化に対応できない技術となっています。

加えて、年間を通して酒質の変化を確かめることが少ないので、酒造りへのフィードバックがありません。

また、杜氏は休みもなく夜中まで作業して大変だと言われています。しかし、半年近くも休みもなく夜中まで作業して体が持つわけがありません。疲れないように休憩をたくさん取っているのでできる事なのです。

わけがわからないのが、持っている技術を教えようとしないことです。なんだかコソコソやっているんですよね。醪へパッパッと何か振りかけていたりと・・・。「技は盗んで覚えろ」の世界が生きており、一見、かっこいい感じもしますが、要は、技術を覚えられたら即失職という憂き目に遭うのを避けるための自己保身なのではないでしょうか。

蔵人として働いた経験からすると、季節雇用の杜氏は作業的に楽をしたがるので、働くほうとしては楽にできました。ただ、酒質向上への欲求は満たされることはありませんでした。

季節雇用の杜氏の悪口みたくなってしまいましたが、私が感銘を受けた酒は、オーナー杜氏の酒でもなく、サラリーマン杜氏の酒でもない、かつての季節雇用の杜氏が造った酒だったことも確かです。

義侠の佐藤勝郎杜氏、倭小槌の浅沼弘三杜氏、羽陽男山の佐々木四郎杜氏、栄光冨士の熊谷喜一郎杜氏、志太泉の高橋貞實杜氏、萩の鶴の葛巻文夫杜氏、これら南部杜氏の方々の大吟醸には凄みがありました

数多くいる杜氏の中には、まだまだ素晴らしい技術を持ち人格的に優れた人物もいらっしゃると思いますので、本日の話は参考まで。

2008年3月 6日 (木)

杜氏の現状について その2

杜氏の現状について その2

先日は、オーナー杜氏についてお話をいたしました。

続いては、サラリーマン杜氏杜氏が年間雇用の場合を指します。

蔵元も一定の規模以上になってくると、経営と製造の両立が難しくなります。そこで、分業体制を取ることになります。

現在では、季節雇用の杜氏は高齢化が進み、サラリーマン杜氏が多くなりつつあります

サラリーマン杜氏の長所は、年間を通じて酒の状態を見ることができるので、酒造りへフィードバックができるということです。安定した酒質を維持するには、季節雇用の杜氏よりも優れた体制に思えます。

しかし、サラリーマン杜氏の欠点は、経営者と常に接しているだけに経営に配慮し過ぎるあまり冒険をすることが少ないということが言えます。

つまり、酒質を変えるということが考えにくく、市場でブレイクするということが滅多にありません

ただ、孫子の兵法「将能にして君御せざるは勝つ」の内容通り、杜氏が将で、経営者を君であるとするならば、杜氏に酒造りの才能があり、経営者が酒造りに対して最大限のフォローをするならば、サラリーマン杜氏体制は優れた体制であるといえます。規模の拡大にも対応できます

私が見て成功していると思われる例は、山形県酒田の「楯の川酒造」さんだと思います。若い社長と杜氏が二人三脚で良い酒を醸しています。

逆に失敗した例も多く見られます。

私の知り合いに20代で杜氏を任された人がいました。本当に大丈夫なのかなと思っていたら、ある年突然、「酒造りやめちゃいました。」と年賀状に書いてあるのを見て、ガクッときました。「やめちゃいました」って、そんなに簡単に杜氏のポジションを捨てられるものなのかと。

サラリーマン杜氏の場合、杜氏のこだわりを貫くことが難しく、キャリアが短い場合、経営者の要求に我慢ができず、退社という形の結末を辿っているような気がします。

蔵人の立場で見ると、オーナー杜氏、季節雇用の杜氏に比べ、権限が無いのがサラリーマン杜氏でした。それでも、酒造りの長という重責があるのですから、サラリーマンの悲哀というものを感じました

次は、季節雇用の杜氏について語ります。

2008年3月 5日 (水)

蔵書自慢

「刈穂」という酒蔵を訪ねて

青木 健作 無明舎
いざ、純米酒 上原 浩 ダイヤモンド社
きき酒のはなし 大塚 謙一 技報堂出版
きき酒名人が書いた酒味道楽 柴田 眞喜雄 三水社
さけ風土記 山田 正一 毎日新聞社
さらに極める日本酒味わい入門 尾瀬 あきら 幻冬舎
つい披露したくなる酒と肴の話 小泉 武夫 小学館文庫
なるほど!吟醸酒づくり 杜氏さんと話す 大内 弘造 技報堂出版
愛酒樂酔 坂口 謹一郎 講談社文芸文庫
歌集 醗酵 坂口 謹一郎 白玉書房
改訂 やさしい清酒の貯蔵・出荷管理 東京国税局鑑定官室編 日本醸造協会
改訂 灘の酒 用語集 原 昌道 灘酒研究会
改訂増補 醸造学各論要義 黒野 勘六 日本醸造協会
改訂増補 日本酒醸造法 完 大阪財務研究会編纂 大阪財務研究会
吟醸酒のはなし 秋山 裕一 熊谷 知栄子 共著  技報堂出版
吟醸酒への招待 篠田 次郎 中公新書
経済と吟醸 酒造要訣 小穴 富司雄 丸善
工業酒造之確立 鹿又 親 日本醸友会
酵素液仕込酒造法概説 東京税務監督局鑑定部編 日本醸友会
酵素化学工業全集7 醗酵工業 清酒と味醂 山田 正一 松井 久夫共著 厚生閣
今夜から日本酒がうまくなる 三浦 行義 たる出版
最近 酒造経営論 後編 鹿又 親 醸造協会
最近 酒造経営論 前編 鹿又 親 醸造協会
最新清酒醸造法 大阪税務監督局鑑定部編 大阪税務監督局鑑定部
三版 釀酒手簿 荒井 伊兵衛 醸友社
旨い酒 日和佐 省二 朝日出版社
住江 金之 西ヶ原刊行会
芝田 喜三代 圭文堂
酒 SAKE面白すぎる雑学知識  博学こだわり倶楽部編 青春出版社
酒づくりのはなし 秋山 裕一 技報堂出版
酒つくりの匠たち 菅間 誠之助 柴田書店
酒づくり談義 柳生 健吉 酒づくり談義刊行会
酒と日本人 井出 敏博 三一新書
酒の科学 田中 終太郎 羽田書店
酒の事典 外池 良三 東京堂出版
酒の神様 野白先生 野白先生謝恩刊行会 野白先生謝恩刊行会
酒の神様 野白先生 野白先生謝恩刊行会 野白先生謝恩刊行会
酒の文化誌 吉澤 淑 丸善ライブラリー
酒の浪漫 住江 金之 四季社
酒の話 小泉 武夫 講談社現代新書
酒は諸白 日本酒を生んだ技術と文化 加藤 百一 平凡社
酒を楽しむ本 佐藤 信 講談社ブルーバックス
酒場で盛りあがる 酒のこだわり話 博学こだわり倶楽部編 河出書房新書
酒造管理表 日本醸友会 日本醸友会
酒造技術者必携 日本醸友会東京支部編 日本醸友会東京支部
酒造工場管理法 日本醸造協会関東支部 日本醸造協会関東支部
酒造講本 増補改訂 日本醸友会広島支部 日本醸友会広島支部
酒造製麹法 渡会 六治 今野商店
酒造製麹論 杉山 晋朔 醸友社益池商店
酒造総典 芝田 喜三代 高陽書院
酒造乃心得 日本醸造協会近畿支部編 日本醸造協会近畿支部
酒造便覧 大阪国税局鑑定官室編 大阪釀造学会
酒談義 辰野 隆 日本交通公社
酒通 鈴木氏亨 四六書院
酒道 西村 文則 健文社
酒博士の本 布川 弥太郎 地球社
酒譜 西村 文則 啓松堂
酒米 山田錦の作り方と買い方 永谷 正治 醸界タイムス社
酒母育成論 杉山 晋朔 醸友社益池商店
酒林雑話 中村 譲 のれん会
酒類工業 山田 正一  朝倉書店
秋田県酒造史 技術編 秋田県酒造組合 秋田県酒造組合
秋田県酒造史 資料編 秋田県酒造組合 秋田県酒造組合
秋田県酒造史 本編 秋田県酒造組合 秋田県酒造組合
純米酒を極める 上原 浩 光文社新書
酒通たのしみ読本 船戸 英夫 新人物往来社
醸技 小島 喜逸 リブロ社
醸造の事典 野白 喜久雄 他 共著 朝倉書店
醸造学 各論 前編 八木 久太郎 奥村 順四郎 佐藤 壽衛共著 丸善
醸造協会主催 第二回清酒品評会 受賞清酒解説集 全 醸造協会 醸造協会
醸造論 古在 由直 述
職人芸の科学 杜氏の技 義本 岳宏 恒星出版
食品の熟成 佐藤 信 監修 光琳
新撰 酒造教程 日本醸造協会中部支部編 日本醸造協会中部支部
随筆 酒 坂口 謹一郎 他 六月社
随筆 酒のさかな 住江 金之 有光書房
世界の酒 坂口 謹一郎 岩波新書
清酒の調熟と吉野杉 辻村慶太郎 辻村商店
清酒吟醸要訣 日本醸造協会東北支部 日本醸造協会東北支部
清酒吟醸要訣 日本醸造協会東北支部 日本醸造協会東北支部
清酒工業 山田 正一編著 光琳書院
清酒醸造原論 中村 政五郎 西澤 新作 供述 群馬県酒造組合連合会
清酒醸造法講義 日本醸造協会中部支部編 日本醸造協会中部支部
清酒乃全貌 花岡 青陽(正庸) 秋田銘釀株式会社
清酒変敗の予防並救済法 全 大内 諒 明文堂
先考記念 醸造論文集 若林與左衛門編 若林與左衛門
綜合 酒造の技術 改訂第三版 日本醸友会名古屋支部編輯 日本醸友会名古屋支部
増補改訂 最新酒造講本 日本醸造協会 日本醸造協会
第11回酒造組合中央会定時総会 酒造大会の栞 山形県酒造組合連合会
知識ゼロからの日本酒入門 尾瀬 あきら 幻冬舎
通俗清酒醸造法 星野栄二郎 磯川精一 共著 大谷商店
杜氏になるには 石川 信夫 ぺりかん社
杜氏釀造要訣 江田 鎌治郎 明文堂
東北地方に於ける釀造に關する文獻集 日本醸造協会東北支部 日本醸造協会東北支部
灘及城島 酒造法調査書 醸造試験所 醸造試験所
灘酒 灘酒研究会 灘酒研究会
日本の酒 坂口 謹一郎 岩波新書
日本の酒 住江 金之 河出書房新社
日本の酒づくり 篠田 次郎 中公新書
日本の酒の歴史―酒造りの歩みと研究(復刻版) 坂口 謹一郎 監修 加藤 弁三郎 編  協和醗酵工業
日本の名随筆11 酒 田村隆一編 作品社
日本酒 秋山 裕一 岩波新書
日本酒 にっぽんの蔵元と銘酒 橋口 孝司 青春出版社
日本酒 百味百題 小泉 武夫 監修 柴田書店
日本酒と私 上原 浩 蔵元交流会
日本酒の経済学 藤澤 研二 実業之日本社
日本酒の愉しみ 文芸春秋編 文春文庫
日本酒ルネッサンス 小泉 武夫 中公新書
日本酒を味わう 田崎真也の仕事 田崎 真也 朝日新聞社
日本酒を愉しむ うまい酒と出会う法 中公文庫編集部編 中公文庫
日本酒醸造法 全 八木 久太郎 博文館
日本醸造協会主催 巡回講演録 日本醸造協会東北支部 日本醸造協会東北支部
乳酸馴養 最新清酒連釀法 江田 鎌治郎 明文堂
醗酵工業叢書 第二編 酒造(清酒篇) 山田 正一 醗酵協会
兵庫の酒米 兵庫県酒米振興会 兵庫県酒米振興会
銘酒製造法 内篇 外篇 全 海老原 幸二郎 高崎書店
日本酒のすべてがわかる本 穂積忠彦 健友館
優良清酒醸造法 増田 義實 有文社
理論と実際 清酒醸造精義 小穴 富司雄 明文堂
實行 清酒改良醸造法 参巻 箱石 東馬 東海書館
實行 清酒改良醸造法 壹巻 箱石 東馬 東海書館
實行 清酒改良醸造法 貮巻 箱石 東馬 東海書館
經濟酒造法 小出 治彦 今野商店出版部
釀界の展望 江田喜壽記念刊行會編 明文堂
釀酒記 大内 残紅 醸友社益池商店
日本醸造協会主催 巡回講演録 日本醸造協会中部支部編 日本醸造協会中部支部編
最新 酒造必携 東京国税局 東京国税局
酒造便覧(清酒篇) 大阪醸造学会 大阪醸造学会
清酒 吟醸指針 山田正一 塚本商店出版部
清酒増醸法 日本醸友会関東信越支部編 日本醸友会関東信越支部編
吟醸秘法 全 柳父 益ニ 佐賀県酒造研究会
続吟醸秘法 柳父 益ニ 佐賀県酒造研究会
酒さけ酒 大関酒造株式会社編 毎日新聞社

 今度開店するお店で閲覧できるように蔵書を整理しており、今のところ記録できたものが以上となります。記録もれや記述に間違いの多いような酒の本は除いたりしていますので、まだまだ所蔵しています。

 日本酒を詳しく勉強されたいかたは是非、当店へ。いわゆる日本酒ライターのかたもどうぞ勉強に来てください。

右側が切れて表示されていますが、お許しください。

 

2008年3月 3日 (月)

あなたの知らない世界 後編

あなたの知らない世界 後編

日本酒における「あなたの知らない世界」とは?

簡単に言ってしまえば、食品添加物を使用しても原材料表示をしなくても良い場合がある、ということです。

酒類の原料として取り扱わない物品」というものがあり、製造工程中に使用しても原材料として表示しなくても良いことになっているのです。

以下のものが該当します。

)健全な酒母の育成を図るために、酒母に加える培養酵母または酵母に付随している必要最小量の培養液

ⅱ)発酵の助成・促進、または製造の健全を期することのみを目的として、仕込み水、または製造工程中に加えられる必要最小限の以下に掲げる物品。

     酸類:乳酸、リン酸、無水亜硝酸、リンゴ酸、および酒石酸

     塩類:食塩酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、メタ重亜硝酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム

ⅲ)酵素剤(原料の1000分の1を限度)

ⅳ)変調醪などの救済のために使用する「酒類の保存のために混和する物品」。

ⅴ)蒸米の粘結を防止し、酒造操作を容易にする目的で原料米処理工程に使われるグリセリン脂肪酸エステル。

「増補改訂 清酒製造技術」より抜粋

 その他、以下のものも加工助剤として用いられますが、表示の必要がありません。

     オリ下げ剤

柿渋、二酸化ケイ素、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン

     ろ過助剤

活性炭、珪藻土、繊維系助剤

 いろいろと列記しましたが、以上のものが酒造工程中に入れられていても原材料表示はありません。

 食に関してブラックボックスはあってはいけない、というのが私の考えです。

 

 醸造アルコールや三増酒だけが悪者になっていますが、考えなければならないことは他にもあると思います

2008年3月 2日 (日)

徒然草 第188段

徒然草 第188段

昨日のお話で記事数が188となりました。

徒然草には、この世を生きていく知恵がたくさん載っています。そのなかでも第188段は、色々と考えさせられる段であります。

吉田兼好は言います。

「一生のうちに、主としてこんなふうにしたいと思う多くの事柄の中で、どれがまさっているかをよくよく考え比較して、自分にはこれが第一と考え定めて、一時のうちでも、そのほかは思い切ってしまって一つのことに精進しなければならない。」

これは、夏目漱石の「私の個人主義」という講演の中の「自己本位」という考えに近いかもしれません。

自己が主で、他が賓であるという「自己本位」の考えを確立した漱石は、自信と安心を得ることができたそうです。「もし何処かにこだわりがあるなら、それを踏潰すまで進まなければ駄目ですよ。」

純米酒専門店を開くにあたって、こういう先人の言葉はありがたく、心強いものです。

ところで、漱石は、「自己本位」に至る以前の「他人本位」のあり方を酒の例を取って説明しています。面白いので紹介します。「私のここに他人本位というのは、自分の酒を人に飲んでもらって、後からその品評を聴いて、それを理が非でもそうだとしてしまういわゆる人真似を指すのです。」

酒の判断基準を持つには時間がかかりますから、まずは「他人本位」から入ることは仕方がないことだと思います。ただ、そこから脱却できたときに初めて、酒の良し悪しがわかってくるような気がします。

2008年3月 1日 (土)

あなたの知らない世界 前編

あなたの知らない世界 前編

昨日の続きです。

2つ目のテーマは、「食品衛生をめぐる最近の動向」。

厚生労働省で食品の安全に25年近く取り組んできた、伊藤誉志男薬学博士(日本食品分析センター学術顧問)の講演でした。

このお話は1時間半で聞くには、中身が濃すぎます。おそらく、食品衛生学として大学で1年かけて学ぶことを1時間半にまとめてお話した内容だったと思います。

ただ、伊藤博士の話のテンポが良く、1時間半があっという間に過ぎてしまいました。

すべてをここで書ききれませんので、お酒に関係があることをかいつまんで説明したいと思います。

それは「食品添加物」に関してです。

一般消費者が「食品添加物」に抱くイメージは、はっきりいって「悪」、「体に悪い」などであり、添加物を入れない「無添加」の絶対的「善」信仰があると言えます。わたくしも漠然とそんなイメージを持っておりました。(おそらく「美味しんぼ」や「買ってはいけない」などに影響されているのでしょう)。

伊藤博士の説明によると、昭和22年に近代食品衛生法が誕生した時に、厚生省は食品添加物の安全性を、急性毒性試験を基に許可しました。しかし、昭和22年以降、新しい安全性試験法が続々開発され、厚生省はこれらの試験法を食品添加物の安全性の確認に導入しました。その結果、新たに人体への影響がある物質が見つかり、一度許可したものを取り消す事態となったそうです。

ここに厚生省の誤算がありました。良かれと思った措置が、説明不足とあいまって、一般消費者の「食品添加物」そのものへの不信へとつながったのだそうです。

厚生省は取り消した食品添加物の危険性を認知・放置していたわけではなく、今から考えると、新たに導入した安全性試験によって危険性が発見された、ということをもっと説明すべきだったのです

食品添加物の危険性だけを宣伝する人たちは、きちんとこういう経緯を学ぶ必要があると感じました。

1991年以前には、消費者の食品添加物に対する不信感、そこに目を付けた業者が、食品添加物を悪者化することで、無添加・加工食品と称する食品が多数現われることとなります。現実には、食品添加物を使用しているにもかかわらずです(当時のポジティブリスト制度と呼ばれる表示の必要な食品添加物80品目以外のものを使用)。

その防止対策として、1991年7月1日にネガティブリスト制度を導入することになりました。この制度は、使用した食品添加物は全て表示することを原則とし、表示の不要な物のみ指定するという制度です。

しかし、現在も適用されているこの制度。この制度により逆に誤解を生むことになりました。

というのも、表示義務を免除される食品添加物には、

     加工助剤

     キャリーオーバー

     栄養強化剤

 以上のものがあります。

制度の目的とは逆に、①の加工助剤への誤解が再び無添加・加工食品の温床となってしまったということなのです。

たとえば、無添加信奉者は、白砂糖の白さが不自然だとして漂白剤の使用を疑い、悪者化しようとします。加工助剤という隠れ蓑に隠れて食品添加物を使っているんでしょう?と

実際には、砂糖を精製するのに使用する加工助剤は、活性炭とイオン交換樹脂であり、漂白剤は使用していません。

伊藤博士はこう断言しておりました。「食品添加物無しに加工食品はできない」のだと。日本酒、ビール、ワインなどの液体食品も、食品添加物である濾過助剤を使用している、と説明しました。

ここでやっと日本酒の登場です。

実際には、無濾過であれば、濾過助剤を使用しませんので、この説明は必ずしも正しいとは言えません

しかし、食品添加物に関して、日本酒における「あなたの知らない世界」があるのです。

長くなったので次回に続きます。

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