古酒

2007年8月 6日 (月)

熟成に向く酒質とは?

熟成に向く酒質とは?

昨日は、熟成酒・古酒についてお話しました。それでは、どのような酒が熟成に向くのか、私の経験から述べてみたいと思います。

まずは、新酒で「かたさ」を感じる酒。お酒を搾った段階で、旨過ぎないことであろうと思います。「無濾過生原酒」で「旨味」が強いような酒は、先がない酒質であり、むしろ、新酒では「旨味」を極力感じさせないような酒が、熟成に向く酒質です。

そのような「かたい」酒は、どのようにして出来るのか?

まずは「」の性質。いわゆる硬水といわれる水は、「かたい」感じがします。これが酒の性質にも現れてきます。灘の宮水がその代表的なものになります。

次に「原料米」。熟成に向く米と熟成に向かない米。熟成に向かないと思われる米に、美山錦という酒造好適米があります。この米で造った酒は、新酒段階では、きらきらした透明感のある酒質となり、これはこれで魅力的なものがあります。しかし、熟成するに従い、その酒質に曇りが出てくるような感じがしてきます。

これに対し、熟成に向く米の代表には、「酒米の王者」山田錦があります。この米は、熟成するに従ってボディ感がでてきます。しかし、高香気性酵母を使用した場合は、その限りにありません

最後には、やはり「造り」。どこにピークをもっていくのかという意識無しには、よい古酒とはならないと思います。ピークが先にある酒は、新酒での「かたさ」が伴ってくるものです。

真の「古酒」となりうるのは、「蒸米をどのように仕上げるのか」、「種麹の選択」、「麹の造り方」、「酵母の選択」、「酒母の形」、「醪の発酵管理」、「上槽後の火入れ方法」など、さまざまな要素を勘案し、熟成に向く酒質の組み立てが出来た蔵元の酒のみです。もちろん蔵元が味オンチでないことは言うまでもありません。

それ以外の古酒は「出来ちゃった古酒」で、高い金を出す価値はありません。

私はなかなか「古酒」には、手が出せません。しかし、今まで飲んで一番旨かった日本酒と言われて思い浮かぶのは、十年以上低温で寝かせた大吟醸古酒なのです。

2007年8月 5日 (日)

古酒または熟成酒の考察

古酒または熟成酒の考察

古酒として売られている酒は、まさに千差万別です。色が濃い酒や古酒とは思えないほどきれいな酒、いろいろです。

飲んでみるとこれがまた、何を基準にしたらよいのかさっぱりわかりません

古酒の魅力については、坂口謹一郎氏が、「忘れられかけた熟成味」(p.89)と題し、「日本の酒」(岩波新書)で、問題提起をしたのが、きっかけだったのではないでしょうか。

坂口氏は言いました。世界の酒は熟成を尊ぶのに対し、蒸留酒を含めた日本の酒は、熟成が軽んじられていると。

「日本の酒」の初版が1964年で、40数年経ち、事情は多少は変わりましたが、一般の消費者にとって、熟成についての認識は未だ低い状態であると言えます。

その原因としては、生食文化に古酒が合わないこともあるでしょうし、現在の日本酒の技術が古酒貯蔵に適していないことも考えられます。

特に、カプロン酸系エステル香がある大吟醸などは、熟成の概念がまったく抜け落ちた酒であり、これを吟醸古酒などと売っている酒蔵は、本当に品質保証の上で蔵出しをしているのか疑問に感じます。

しかし、坂口氏が魅了された熟成味は、普遍性があるような気がします。それは熟成による「調和」は、人為を超えている味覚であり、時という要素でしか出てこない味覚であると思うからです。

南部杜氏の講習会では、生酛系酒母を使用した酒は、熟成させても着色し難く、「老ね香」ではなく「熟成香」になるという話をした先生がいらっしゃいました。

「日本の酒」の中の「熟成の美徳」(p.1213)には、適度に熟した酒のよい性格を挙げており、お酒の熟成の性格がはっきりつかめるようになれば、「はじめて日本の酒の卒業生ということができよう」と書いてあります。

学ぶところがなければ、卒業もできないな、などと思います。

日本の酒の嗜好文化は、未だ初歩段階なのかもしれません。卒業生を出せるような、飲酒文化育成が必要です

参考文献

日本の酒 坂口謹一郎著 岩波新書(1979年)

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